先日、あるスタッフからビジネス書をもらった。
なんでも、業者さんからいただいたそうで、ある大手回転すし店をメインとしたマネジメント関係の書籍だった。
企業改革であったり、ブランディングであったりPR戦略、経営企画のシステム化、サービス力など企業経営に不可欠な内容が例をまじえて書いてあった。非常に読みやすい本だった。

最後の最後でサービスの部分で筆者の体験を交えたエピソードが書いてあったが、これが中々良い話なので紹介したいと思う。

お二人とも杖をついて少しふらついていたので、扉をあけて「手をつないでいきましょう」と声をかけました。するとおばあさんが「子供も孫もいないけど、まるで孫みたいに接してくれてうれしい。実はおじいさんが今退院したところなの」とおっしゃったんです。

てっきり病気が治ったものだと思い、「そうですか、元気になってよかったですね」と言ったら、「違うの、あと1カ月の命なの」とおっしゃる。もう治る見込みがなくて、最後の帰宅だったんです。

聞けば、食事が許されていない状態だったとのことですが、おばあさんは思い残すことがないようにしてあげたいと思ったのでしょう。最後に食べたいものをおじいさんに聞いたら「寿司」だというので、病院からの帰り道にたまたまあった寿司店に訪れたのだそうです。

結局、おじいさんが召し上がったのはマグロ1皿のみでした。しかも、シャリが飲み込めなかったのでしょう、吐き出した様子がありました。

おばあさんも2皿しか召し上がりませんでした。しかし、会計の時にそばにいったら「ごめんね、食べられなくて」とおっしゃいながら、とれもうれしそうな顔をしていました。
そこで、まだ他のお客様があまりいなかったので、ウェイティングスペースにお連れして、手を握りながら「また食べに来なきゃだめだよ」と励ましたら、涙を流しながら「絶対にまたくる」と約束してくれました。そして、出口まで手をつないでご一緒したら、「仕事中なのに悪いね。でも、悪いんだけど、今だけ孫になってくれない」とおっしゃって。お互い涙を流しながらお別れしたんです。

この出来事を偶然起こったものだと思いますか?
私は、決して偶然ではないと思っています。極端な話ですが、このおじいさんのような病気でなくても、食事の帰り道に交通事故で亡くなることだってあり得ない話ではありません。

要するに、外食産業でお客様をもてなすということは、いつだってその最後の食事となる可能性があるということなのです。それがわかっていれば、いつでも全力を尽くさないではいられないはずです。

考えてみてください。なぜ、おじいさんは歩くのもつらい状態なのに、わざわざ店舗で食事をしようとしたのか。
寿司ならばスーパーでも売っていますし、自宅のほうが気兼ねなく食べられると考えても、不思議ではありません。それは、ハレ(晴れ)の場だからです。そして、ハレの場にふさわしいもてなしを受けることを期待しているからです。決して、単に食事だけを求めて来店するのではありません。

外食産業はこの気持ちを忘れてはならないと思っています。お客様に提供するのは、食事だけではありません。その空間で食事をしたという喜びや感動を提供して、初めて満足してもらえるのではないでしょうか。

出会った人を必ず笑顔にする。私の考えるサービスの基本的なルールです。
うーんいい話だ。肝に命じよう!飲食人であるために。